新卒採用に尽力して「求める人物像」にぴったりの人材が集まるようにはなったものの、すぐに退職してしまう社員がいたり、個人のポテンシャルを業務の中で引き出せていなかったりと、入社後のオンボーディングに課題を感じている企業も多いのではないでしょうか。
19年卒の新入社員からオンボーディングの仕組みを大きく変革した株式会社ディー・エヌ・エー様。採用から入社、配属前の新入社員研修、配属マッチング、そして配属後のサポートまで、シームレスなオンボーディング体制を実現させるためにヒューマンリソース本部(以下「HR」)が打ち出した施策について、お話を伺ってきました。
「主役になれる環境づくり」に注力
平田 弊社ではこれまで新卒の採用活動に特に力を入れてきた甲斐もあり、ありがたいことに非常に優秀な学生たちが集まってきてくれるようになりました。
しかし、2018年あたりからHRの中で「HRとして事業に資するために入社後の成長までフォローを行う」ということを次のフォーカスすべきポイントとして考えるようになりました。実際、新入社員が各部署に配属された後は、ほとんど現場に委ねてしまっている状況でした。会社として求める学生を採用できたのは良いものの、3年後、5年後にはどのように成長してほしいのか。HRがもっと成長のための環境づくりにも注力すべきではないだろうか。そんな議論が深まり、最終的には「主役になれる環境づくり」を新卒グループのビションとして掲げ、その考えに基づいて採用と育成両方の取り組みを行うようになりました。
現場と連携して新卒の成長を継続的にサポート
坂本 まずは新卒入社の社員全員に受けてもらう研修のアップデートを行いましたが、その中で自身について改めて見つめ直し、どのようなキャリアを描いていきたいかを考えた上でキャリアをスタートできるように設計しました。
たとえば、研修の中で新入社員には各自でライフチャートを描いてもらいました。過去のモチベーションの変遷を書き出してもらうことで、どんなことがその人の原動力になるのか、何にストレスを感じるのかといったことがわかってくるんです。他にも性格診断を受けてもらったり。この様に、自己理解を深めた上で、個人目標を書いてもらうように変えました。
また、新入社員一人ひとりに先輩社員(メンター)がマネージャーよりも近い位置でサポートする「メンター制度」を見直しました。メンターがより業務をキャッチアップしやすい体制を整えたり、定期的に行われていた1on1ミーティングの内容や頻度の改善を行い、新入社員の成長を促する環境づくりを進めました。
こうしてメンターと新入社員が理解を深める機会をつくり、信頼し合うだけではなく、切磋琢磨し合うような関係性を築いてもらうことは新入社員の成長だけではなく、メンター自身の成長にも繋がるとこれまでの経験からも感じていましたので、注力して行いました。
さらに、新入社員の配属先が決まり、メンターとのマッチングが完了したタイミングで、新入社員・メンター・HRの三者面談を始めました。HRからメンターへの引継ぎも兼ねていますが主な目的はメンターが新入社員についてより深く知ってもらう場の提供です。
新入社員とメンターの対話の中に、我々HRが入り、採用活動中含めて把握している新入社員の長所や目標を余すこと無く伝えることでメンターの新入社員の理解を促し、配属後にどのようにサポートを行うのが良いかイメージを描くやすくなるようにしました。
引き継ぎを終えて新入社員が現場に配属された後もサポートを継続しており、定期的に新入社員とメンターの双方へアンケートを実施し、新入社員がポジティブな状態で働けているかや配属先で周囲と良好な関係性を問題なく築けているかなどを確認しています。
必要に応じて、こちらから面談を提案し対話の機会を設けることもあります。
1on1ログによって、即座に新入社員の不安に気づく
平子 TeamUpを導入させていただいたのも、まさに配属前から配属直後という移行期間中に適切なケアをしていくためのツールを探していたから、という背景がありました。
特にエンジニア職のオンボーディングではTeamUpの1on1ログが大活躍でした。エンジニア職は研修期間が長いこともあり、配属にも時間をかけて決めているんです。
研修期間中はメンターたちにも協力してもらい、ペアを変えながら、新入社員と何度も1on1ミーティングを実施してもらいました。配属への納得度を高めたかったので、1on1ミーティングでのやりとりも踏まえて部署や担当メンターを決めていく方針にしたんです。メンターをローテーションさせていく際、TeamUp上に1on1のログが残っているので、引き継ぎがとてもスムーズにできたのがよかったです。
おかげで、2019年度上期は「一人のメンターだけで一人の新入社員を育成するのではなく、チーム全体で見ていこうよ」という空気感がとても浸透したように思います。我々HRとしても、先ほどお話したアンケートと併せて新入社員やメンターの状態を把握できるので、不安そうな人をすぐに察知して対応できるようになりました。
DeNAの武器を「個」の強さから「組織力」へ。そのために、意図的にメンバー同士の化学反応を引き起こす
坂本 ここまで弊社が成長してきた要因の一つには、間違いなく社員それぞれの「個」の強さがあると思います。しかし、組織が拡大してきて、今後はチームとしてもさらに強化していけるフェーズに入ったのではないかと思っています。
フェーズを移行していくには、まずは我々HR内から始めることが良いと思います。やはり、ミニマムでもいいので自分たちで一度実践しておくと、全社へ施策を打ち出すときの説得力も大きく変わってきますから。
弊社にはすでに多様性のあるメンバーがたくさん集まっていますし、皆お互いを理解し尊重するカルチャーがあります。個々の考えや価値観を伝え合い融合させて、意図的に化学反応を起こすことで、もっと組織として成長できるのではないかという今までにない期待を込めて、今後の成長環境づくりに取り組んでいきたいです。