会社が目指す世界観から共有していく
━━1on1を導入されるまでの経緯を教えていただけますか?
佐藤 この7年ほどで社員が2倍に増えたんです。以前から「社員の成長が会社の成長」という考え方は大事にしていて、一人一人が定期的に目標を記入するチャレンジシートというものや、月報を書く文化はありました。しかし、規模や事業領域が拡大していく中で、それらのツールが上手く運用されずに形骸化していく状況がこの数年で見られるようになってきたんです。また、今まであった制度の効果は各チームリーダーの能力に依存していました。そこで、評価制度やキャリアパス設計から見直して、誰がリーダーやメンターを担当しても、社員の皆が成長できるような仕組みをつくろうという動きが始まりました。
梨本 評価制度などを検討するにあたって、最初はより基準を細分化していく方向で考えていました。しかし、細かくすればするほどキリがなくなってくるので、結局大事なのは、その人に合った目標を設定したり、コミュニケーションをとったりしながら一緒につくりあげていくこと。そういうスタイルでしか拾いきれない、という結論に至りました。だからこそ大変かもしれないし、時間もかかるかもしれないけれど、ちゃんと人と人の関係性を丁寧に築くことから始めていこうという思いがありました。
周藤 つまり、最初から1on1を意識していたというよりは、キャリアパスやキャリアデザインの道筋を立てようという議論の中で、手段のひとつとして1on1があるよねという流れでしたね。
━━500名規模の社員を巻き込むために、どのようなステップを踏んで導入を進めていかれたのですか?
佐藤 課題を意識し始めて仕組みをつくるまでには一年ほど費やしました。今、何が会社に合っているのか、何が必要なのかという課題や解決策を明らかにする段階から社員を巻き込んでいったんです。何度かワークショップを行い、まずはマネージャー層に伝えていきました。その後、現場の社員向けにも目的や変更点についての説明会を何度か開催したり、質疑応答の場を設けたりもしましたね。
━━マネージャー層には具体的にどのような話をされたのですか?
梨本 まずは改めて、我々の強みを見つめ直すところから。ProVisionは未経験のITエンジニアを採用して一人前のエンジニアに育てていけるという強みを持っているので、それを生かすためにどうしていこうか。マネージャー層と現場の社員がより心理的安全性を持った上でお互いの成長について話し合える状態になるにはどうしたらいいか。「こういう世界になっていくべきだよね」という話を細かく伝えて、イメージをすり合わせていきました。今年で設立15年目なのですが、我々経営層としても改めて自社で何を大事にしているのかとか、どういう社員を評価したいのかということを考え直す良い機会になったと思います。
━━マネージャー層と現場メンバーを巻き込んでいく上で心がけていたことはありますか?
周藤 現場の巻き込み方は二通りありました。まず、1on1に特化しているわけではないのですが、社員のキャリアパス設計を主導するチームがあるので、そのチーム経由で現場の声を吸い上げていく形。そしてもうひとつが、ワークショップの場で現場の状況を踏まえてすり合わせていく形。一貫して、「意見を吸い上げながら会社全体でつくり上げている」というスタンスを心掛けました。結果的に、メンバー全員が比較的前のめりに関わってくれているのではないかと思います。
梨本 我々の業態として、全員がProVisionという会社の中で仕事をしているわけではなく、お客様先でお仕事をさせていただいていることもあるので、プロジェクトによって勤務拠点が異なるんです。会社の規模が大きくなるにつれて、ProVisionというコミュニティに一度に集まる機会も少なくなっていく。その中でProVisionの社員として、会社が目指す世界観のようなものを共有しておく必要があるということは、皆が皆どこかで感じていたんです。そんな状況に本格的にメスを入れるという意味合いで今回の一連の取り組みを行いました。
1on1ログから見つけたモデルケースを横展開
━━1on1は人によって進め方が変わってくるので、どうしても属人化してしまう部分はあるかと思いますが、質の担保はどのように行っていましたか?
佐藤 私たちの会社では、期初に全員が一年後の目標を立てています。毎月1on1を実施していく中で小さな目標は変わっていくかもしませんが、最終的なゴールについてはどこで話しても同じ。たとえば途中で現場やマネージャーが変わることもあるのですが、そのゴールに関してはぶれないだろうと踏んで実施していますね。
━━個人の能力に依存させず、誰が1on1を担当するとしてもぶれない軸をまずつくろうとしているのですね。
梨本 だからこそ、本人たちだけではなく、関係するラインの人たちがログを見られるように設定をできるというのが1on1ツール導入のひとつの条件ではありましたね。また、1on1ツールを選ぶにあたって決め手となったのが、TeamUpが人事評価ではなく社員を育成するための1on1というものを重視しているところ。それが弊社にとっての1on1の位置付けとマッチしていたという点で選ばせていただきました。
周藤 TeamUpさんとお話した際に我々のやりたいことを理解していただいて、一緒に成長してくださるイメージが持てたのも大きかったですね。
━━ありがとうございます! では逆に、ツールがなかったら困ったであろうポイントはありますか?
佐藤 1on1はやはり閉じた世界になるので、それを見えないままにしておくのではあまり効果がないと考えていました。さらに私たちの会社の場合、1on1の内容を評価にも結びつけようとしているので、そこに透明性がないと不満も生まれてしまうだろうなと。
━━なるほど。では、ここまでTeamUpを使っていただいて、実際に何かポジティブなインパクトはありましたか?
梨本 今までそもそも面談などのログが何もなかったところから、ログができて後から確認できるようになったのがひとつのメリットでした。あとは目標や月報の記録がいろいろなところに分散して置いてあったため、なかなか見に行けなかったんですよね。今はTeamUp上に目標も1on1のログもあるので、管理者側としてもひとつの場所を見ればその人のことがわかる状態。明らかにセッション頻度は高くなりました。これまでは期初に立てた目標を、半期後の評価時期に忘れている人もいたと思うんです。しかし、TeamUpを使うようになってからは、1on1を実施する度に開く画面上で目標が目に入って、振り返ることができる。そういう習慣づけの効果が大きかったのかなと思います。
━━1on1のログは、具体的にどのような観点で活用しているのでしょうか?
梨本 管理者として一番見ているのは、そもそも実施されているかどうかという点です。さすがに500人全員のログの中身を常に見ているわけではないのですが、たとえばマネージャー層から「最近〇〇さんががんばってくれていて」と誰かの名前が挙がったときに、その人の1on1ログを確認して、どんな目標を立ててどんな段階にいるのかということを探しにいけるのが、ひとつの使い方として役立っていますね。
周藤 良い事例を出している現場があると、上手く回しているマネージャーが1on1でどのような接し方をしているかを1on1ログで確認しています。逆に、苦戦している現場があったときに、その差分についてフィードバックすることもあります。基本的に上手く回っている現場は1on1も充実している傾向があるんですよね。
━━では最後に、今後どのような組織にしていきたいですか?
佐藤 私たちの会社ではすでに様々なバックグラウンドを持った人たちがいますが、これからますます多様性を持ったメンバーが増えていくことを予想しています。それぞれが持ち味を発揮して働ける環境を整えていきたいですね。そのためには画一的な枠組みだけでは不十分だと思いますし、一人の良いところを伸ばすという部分に1on1を上手く活用していければと期待しています。